宙の森−プロローグ−

リヴァイアサンは幻界で一番偉いのね?
そのわたしの問いに、リヴァイアサンは小さく苦笑をしてみせた。
「この場所のみを幻界と呼ぶならばそうじゃろうな」
「?」
まだ幼いわたしは、難しい言葉も難しい話もわからなかった。けれど、難しい話が答えになってしまう質問を幾度もしてしまい、そのたびにリヴァイアサンやアスラを困らせていた。
幻獣である彼等は人間の子供であるわたしに対して年齢相応に話をすることが時折難しかったのだと、大人になってからそっとわたしに教えてくれた。
「この場所は、そう、幻獣の国のようなものだ。国というものは土地があり、そこに生き物がいる。その場所で生きているものを統治する王がいるかいないかはその国の形にもよるじゃろうが、ここには、いる」
統治、という言葉はわたしには難しくてわからなかったけれど、その言葉がわからなくてもなんとなくは彼が言っている意味が理解できる。わたしはもう一度同じことを、今度は理由をつけて聞いてみた。
「だから、リヴァイアサンは、偉いんだよね?王様だもの」
「ここのみを幻界と呼び、幻獣の国でのことならば」
「・・・んー?」
何を言っているのかやっぱりわたしはわからなくて。
リヴァイアサンは困ったような(幻獣だってそういう感情を表す表情を見せるの。わたしはそれがわかるんだけど・・・もしかして、他の人達はわからないのかもしれない)顔付きになって、それから言葉を選ぶようにゆっくりと言った。
「わしがここで王となって幻獣達を統治するのは、とある方からそう命令されたからだ」
「めいれい」
なんとなくだけしか知らないその言葉。
それでもニュアンスはわたしにも伝わる。王様っていうのは、お城の兵隊さんたちにめいれいをするんだよね?じゃあ、その王様にめいれいするのは、一体誰なのかしら?
「幻獣神というお方が、この世界にはいるのだよ。そのお方が、我ら幻獣達の中で最も偉いのだ」
「げんじゅうしん」
生まれてはじめて聞いた言葉。
「我ら、幻獣を作った神だ」
幻獣を作った、神様。
「お前にはまだ難しい話だったかもしれないな」
「そのげんじゅうしんって、どこにいるの、どんな人なの」
「どこかとても遠い場所にいて、もう長く会っていないのでな。どんな人といわれても・・・」
「遠い場所って?ミストの村くらい?」
わたしは、幼い自分にとって知っている地名を必死になって探したけれど、人間界、ミストの村、カイポ、それから・・・。そんな風に旅をした先々の村の名前しかわたしの頭の中にはない。
「もっともっと遠くだろうな」
「なんていう国にいるの?」
「国はない。ただ、そのお方がいるだけ、なのだと思うが・・・誰も、知らないのだ」
「誰も知らないの?誰が一緒にいるの?」
「誰も」
そのときのリヴァイアサンの声はとても静かで、穏やかだけれど何故だか響き渡った。
「誰も・・・?」
「そう、誰も、一緒にはいない。何故ならば、あの方は神なのだから」
どうしてだろう?
わたしはリヴァイアサンの言葉が、一体どうして理由になるのかがわからなくて不思議で仕方がなかった。神だから、誰も一緒にはいない。その意味がわたしにはわからない。
わたし達は神様じゃないから、誰かと一緒にいるっていうことなのかしら?
もっともっと遠くにいる、ただ、その幻獣の神様だけがいる場所。
たった一人で、いるのだろうか。その神様は。
「・・・可哀相」
ぽろり、とわたしの口からそんな言葉が零れたそのとき。
「リディアー!」
聞き慣れた声が聞こえた。リヴァイアサンの館に幻獣の子供達が入って来た音がしてわたしは振り返った。
「リディアー!遊ぼうよー!」
「今日は人間の子供の遊びしようよ!」
ボムやチョコボの子供。わたしが幻界に来てからずっと一緒に遊んでくれる彼等は毎日ではないけれどわたしが遊べる日には迎えに来てくれる。朝になると必ずリヴァイアサンのもとに挨拶をしにくることを知っていて、やってきたのだろう。
その頃私達の間で流行っていたのは、わたしがミストの村にいたときに遊んでいた遊びだった。
かくれんぼとか、鬼ごっことか。
鬼ごっこだと、わたしが一番大変になってしまうから、わたしが鬼のときはチョコボは片足で、ボムは低空飛行で付き合ってくれる約束になっていた。案外と片足でもチョコボは早くて大層な運動になってしまうけれど。
「リディア、子供達が呼んでいる。遊びに行ってきなさい。今日は遊んで良い日だったからの」
「はあい。じゃあ、行ってきます!」
中途半端に終わってしまった話はその後リヴァイアサンから蒸し返されることもなかったし、わたしから再び質問をすることもなかった。子供の疑問なんていうものはきっと、いつだってそんなもの。そのとき聞きたかったことを聞いて、わからなかったら忘れるし、わかったら「ふうん」ってくらいだし。時々しっかり頭の中に残っていても、それはどれほど重要なことなのかなんて後からしか絶対わからないんだろうってわたしは思う。
そしてどうやらその日のことは、わたしにとっては後者のことだったようで。
やっぱりリヴァイアサンとのやり取りはわたしのどこかに仕舞われていて、いつかくる時を待ち続けていたのだと思う。リヴァイアサンとのやりとり、そこで得た知識、そしてその時感じた気持ちをまるで凍結したまま忘れ去らないように刻み付けたように。
そう。出会いの日が来ることを、わたしの体のどこか、心のどこかで待っていたのだということをずっと後でわたしは知ることになったのだ。


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モドル

サイト開設と共に。これから先はちまちまとバハムートとリディアの幸せのためにこの続きを書いて行くと思います。いつ更新できるのかまったくもって謎ですが、お付き合いしていただけたら嬉しく思います。


Atellier Paprika様




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