雨
こういう日はじめじめして嫌ね。
ローザはそう言いながら、宿屋の部屋の窓から外を見ていた。
強い雨音。
ローザがいれてくれたお茶を飲んで、わたしは黙る。
うまい、とカインが言うと、ローザは嬉しそうに、ありがとう、って言う。
雨が屋根を打つ音があまり好きじゃない、とローザ。
君は昔からそうだったね、とセシル。
雨ん中の修行が嫌だったなあ、とエッジ。
俺もそうだったな、とカイン。
黙っているわたしに、セシルが優しく聞いてくるの。
リディアは、雨は嫌いかい?
わたしは、黙ってただ頷くだけ。
雨は嫌い。
だって。
もしもあの日に雨が降っていたら。
そうしたら、ミストの村は。
目の前で優しく微笑むセシルを見た瞬間
わたしの心の言葉は、溜息となって消えてゆく。
リディア?
「雨は、嫌い。だって、お外に出られないから」
わたしの精一杯の強がりを、どうか見透かさないで。
それは、あなたに気付かれたくないのです。
ああ。
こんな気持ちこそ、炎に巻かれて消えてしまえばいいのに。
モドル